そういう意味では

役所ってのはどうもメッセージの発信が下手糞なようだ。

いろいろイイこともやってんのに、イマイチうまく伝わらない。たぶん、言いたいことを小難しい言葉でわんさと並べ立てたり、条文通りの言葉の使いまわしにきゅうきゅうしたり、まぁ表現の仕方がかちんこちんですわな。うちの役所はその典型かもしれんな。

そういう危機感を抱いてか、うちの事務方トップが広報戦略改革に乗り出した。改革案の公募もするらしい。広報は「PR」(パブリック・リレーションズ)じゃない、「CC」(コーポレート・コミュニケーション)だ!だそうな。難しくて何のこっちゃよー分かりませんが、とにかく「発信する組織」に生まれ変わっていこうとするアティテュードはいい感じな気がします。



はっきり言って日本で一番広報がうまくなくちゃいかんのは役所という組織じゃなかろうか。だって顧客は日本全土全て、津々浦々。それは紛れもない事実。最近は観光立国の推進ということで、アジア圏や欧米に対しても直接かつ効果的にメッセージを発信する必要性がどんどん高まっている。

せっかく世の中にはWEBサイトという便利なものが普及している。はっきり言って役所と国民との関係において、インターネットは革命的だと思う。今まで役所の情報発信ツールは、政府広報とか、マスコミを通じた政策案内とか、ポスターとか、公聴会とか、まぁその程度。間に何かが入ったり、対象者が限定されてたりと、何かと限界が多かった。

しかしWEBサイトは、役所が思ったことを直接、言葉に乗せて伝えられる。誰も通さない。政策の相手方と政策を考えるほうがダイレクトにつながる。そういう意味で、国民の選挙で選ばれたわけでない役人で構成される役所が、ようやく国民との関係性を作り始めるチャンスを得た。というかネットが90年代に爆発的に普及し始めてもう随分時間が経つのに、「ネットの普及」に力は注いできたが、肝心の自分がその効果的な使い方をいまだにわかってないという政府の矛盾がある意味すごい。もはや広告業界においてインターネット広告は一大ビジネスとなり、その市場シェアもがんがん拡大しとるわけで(電通日本の広告費2006」を見るべし)、企業の情報発信手段としてネットはもはや不可欠の存在になりつつある。

http://www.dentsu.co.jp/marketing/adex/adex2006/index.html

ただし、WEBサイトの最大の欠点は、もともとユーザがその対象に何らかの興味なり関心の「キッカケ」がなければアクセスしてもらえないこと。この「キッカケ」づくりがWEBを通じたコミュニケーションの一番の難点である。向こうがこっちをみて面白そうだと思って話かけてくれないと会話が始まらないわけです。いまや陳腐化した手法だが、民間の会社はこぞってテレビCMのラストに検索ワードの打ち込み×検索ボタンをカチッとな!方式を採用した。じゃあ、役所にとって、「キッカケ」とは何だろうか。


今年に入ってからようやくうちの広報課もWEBサイトのアクセス解析をし始めた。全職員に定期的に「今月のアクセスランキング!」的なものを送りつけてくる。たぶん、他の役所で先進的なところはとっくの昔に始めてるんだろう。入省直後の研修であるIT系情報誌の切り抜きが配られたことがあって、それによると、うちの役所のサイトは確かアクセシビリティで政府全体でケツから数えたら5本の指に入るレベルだったと記憶している。ひどいもんだ。

で、このランキングメール、どれだけの職員が見ているか知らんが、俺は毎度興味深く見ている。役所内で職員全員宛に送られてくるメールで一番面白い。なぜなら、人びとがうちの役所の仕事のどの部分に興味を持ってるのか、全般的な傾向が見えるからだ。道路渋滞情報などのパーマネントに興味を抱かれる情報はさておき、タイムリーな傾向も見える。耐震偽装関係で法改正の特集コーナーを設けているが、6月末から急激にアクセス数が増加してここ数ヶ月上位5位以内をキープしている。また、夏になると「小型船舶免許」という言葉でアクセスしてくるひとが急増する。マリンスポーツを始めようという「キッカケ」の時期だからだ。

ただ、せっかくアクセス解析を始めたはいいものの、広報課は、ランキングを作って急浮上したワードだけ追いかけて「あ、今月はこういう理由で急浮上したんですね〜」ぐらいの茶の間の話題程度の分析しかしていない。はっきり言って、役所の仕事は異常に幅が広いので枠の定まったマーケットというものがない。うちのようにインフラやら交通やら何やらがごちゃまぜの図体のデカい職場だとなおさらマーケットが見えにくい。それが、WEBサイトという一つの窓口を通じて人びとの関心の全体的な動向を集約できるチャンスが出てきた。もちろん、WEBを通じたニーズの動きなど、単なる一つのインデックスでしかなく、どこまで信頼できるか分からないが、それでも一つのツールとして徹底的に利用しつくすべきである。そこから国民の興味を引く「キッカケ」の作り方が見えてくる。

役所はメッセージを伝えてなんぼの組織だと思う。自分たちの中だけで凝り固まってたら終わる。とゆーかそんな相手のいない寂しい仕事の仕方してたら世の中で生きて行けない。法改正して終わり。あとは勝手にどうぞ、じゃなくて、どこがどう変わったのか、これによって世の中がどう変わるのか、変わるにあたってみんなに気をつけてほしいことは何か、万一トラブルが起こった場合にはどうすればいいのかなどなど、うちからみんなに発信すべきメッセージは山ほどあるはずだ。

こういうささいなところから、この役所が、というか日本全土にある「役所」という名のつく全ての旧態依然とした組織の意識が、少しずつ変わっていくといい。