認定制度始動

海運10社に優遇税制 日本籍船・船員増加へ
2009年5月24日 中日新聞朝刊
http://www.chunichi.co.jp/article/economics/news/CK2009052402000147.html

 日本籍の外航船が減り続けている問題で、減税効果が見込める新たな課税方式を受けるため、外航日本籍船の8割を占める海運大手10社が申請した「日本船舶・船員確保計画」を国土交通省がすべて認定した。各社は、新造船を中心とする日本船籍化の手続きや日本人船員の採用に着手する。

 新課税方式は「トン数標準税制」で、日本籍の外航船が対象。海運日本の屋台骨を支える日本籍船と日本人船員の増加を目的に、昨年の海上運送法改正などで導入された。

 国交省によると、法人所得4億円の会社が45、000トンの船を365日運航し2億円の所得を得た場合の法人税額は、現行の1億2000万円から、半額に近い6300万円に減る計算になる。

 重量ベースで貿易量の100%近くを担う外航海運の船舶は約2300隻あるが、うち日本籍は92隻(4%)で、大半がパナマなど税金の安い外国籍船だ。約4万6000人の外航船員も日本人船員は2650人(6%)にすぎず、人件費が安いフィリピンなど外国人が主役だ。

 日本籍の外航船はピーク時の1970年代前半に1600隻、日本人の外航船員も5万7000人いた。日本商船隊の大半が外国籍船という現状は、国会審議中の海賊対処法案が外国籍船も保護対象に含める背景にもなった。

 日本郵船など10社が国交省に提出した計画によると、日本籍船の10社合計は現在の76隻から2014年には160隻に倍増し、日本人船員も10社で現在の1050人から1138人に増える。

 国交省は、船籍国の災害などで外国籍船や外国人船員を利用できなくなる非常時、原油や食料の安定輸入に日本籍船450隻、運航に日本人船員5500人が必要と試算。日本籍船への今回の優遇措置は「目標実現への第一歩」としている。

 【トン数標準税制】船のトン数で決める一定のみなし利益で法人税などを算定する世界的な標準税制。毎年の利益に応じて納税額が変動する現状に比べ、法人税額などが毎年ほぼ固定され、好景気が続くと減税効果がある。日本の場合、海運会社は5年間で日本籍船を倍増するなどの計画を国土交通省に申請、認定後に新税制を受けられる。