あけましておめでとうございます。

長らく放置してましたが、あけおめです。今年もどうぞよろしく。

年末年始はおかげさまで8連休をもらえて実家でゆっくり過ごすことができました。特に、2日に恒例行事となっている中高時代のバスケ部仲間の新年会では、いつも午前中のバスケが終わってしまうとそれぞれ同期ごとに集まって飲み会をやっていたのが、今年は1年上の先輩から2年下の後輩まで総勢30名ほど集まる大宴会になりました。みんなほんといろんなところで活躍していて、こりゃ負けてられんと気合いを新たにしました。しかし野郎が30も集まると年明けだろうがなんだろうが卑猥な話のオンパレードになるわけで、隣でこじんまりと6人くらいで新年会をやっていた女の子たちからクレーム付けられる始末。うをー。

しかし8連休もあったのにあっという間でした。こんなに休みもらえたの仕事始めて初だったので、せっかくなら旅行に行くのもよかったなぁと…。


が、そんな気分も東京に戻ってみると、山のように溜まった仕事を前にあっという間に霧散です。



いまやってる一番大きなテーマは、やはり改正建築基準法の6月施行に向けた準備作業です。構造計算書偽装問題を受けてあれから様々に建築関連の制度変更が行われたわけですが、それはまだ法律レベルの話で、実際の執行を行っていく上ではもっと細かいレベルでのルール策定なり手順なり法的な問題点をクリアしていく必要があるわけです。

そして、準備作業と一言で言っても建築行政を担当している自治体との調整や設計者、施工者、消費者等との調整から、制度設計の企画立案まで内容は多岐に渡るのですが、法規担当として俺がやっているのは、このうち政令・省令・告示の改正、指定機関の指定準則の改訂作業です。もちろん俺だけでなく課内の若手係長3人が中心チームになって仕事をやっているわけですが、全部同時並行でやっているので相当ハードな作業になっています。



まず、政令改正は、昨年6月に成立した改正建築基準法において、今まで相当程度政令に委任されていた構造耐力規定の体系が法律上に引き上げられる形で明確化されたこと(新20条)、3階建て以上の共同住宅の工事工程について中間検査が全国一律に義務化されたこと(新7条の3第1項)を受けたものです。

この法改正に伴い、建築基準法施行令において、構造耐力規定(政令第3章)の大幅な再編、中間検査の義務付け対象となる工事の工程の特定などを行う必要があることから、その立案作業を行っているところです。特に、構造耐力規定は、建築基準法の中でも特に技術的マターが多い上に規定体系の構造が極めて複雑で、再編にあたっては慎重な作業を要するため、毎日神経をすり減らしながら条文作成に当たっています。

この政令案がある程度固まったら、今度は細かい構造設計の技術基準を定める告示の策定作業が控えており、これは俺のような建築工学の素人がパッと見ただけでは理解不可能な構造設計の条件式や数値、単位が並んでいて、つくづくとんでもない職場に来てしまったなぁと思うわけです。



次に、省令改正は、確認・検査の手続きを定めた施行規則と、建築基準法に基く民間機関に関する細目を定めた指定機関省令の2つが改正ターゲットになっています。

後者では、従来から建築確認を行ってきた指定確認検査機関の指定要件の見直しと、今回の法改正で新たに建築確認時に構造計算のダブルチェックを行う機関として創設された指定構造計算適合性判定機関の指定要件、業務遂行上のルールを整備するのがテーマとなっており、かなり政策的な判断が問われるものになっています。

特に、指定確認検査機関については、構造計算書偽装問題の発生を踏まえ、公権力の行使を担う機関としての適格性を高め、責任を明確化していくための条件整備をする必要があることから、確認検査を行う資格者の配置要件などの業務実施体制や、確認・検査に瑕疵があった場合の賠償能力の確保などについて、いろいろなデータを見ながら妥当なルールを策定する作業を行っているところです。

この作業は、指定準則(指定機関の指定要件を具体化した行政機関の定める内部規則。法令ではない)の改訂方法にも影響を与えるため、この改訂と平仄を揃えながら作業をしていく必要があります。

また、手続きを定めた施行規則についても、様々に見直しが必要で、特に建築確認の申請にあたって必要な添付図書やその図書に明示すべき事項についてもいろいろ変えていくことになります。今回の法改正で建築確認や検査の実施方法を詳細に示した「指針」を大臣が策定することとなっており(新法第18条の3)、この指針と一体となった施行規則の見直しを行っています。ただ、この指針というのはようは建築基準法政令・告示を全て審査者側の立場から書き直したようなもので、はっきり言って分量が膨大です。文面の法的審査を行う俺としては機が遠くなるような作業ですが、まぁ何とかやりきって見せます。


こういった基準法改正を受けた法令改正以外に、偽装問題を受けて、建築物の違反や事故の調査を専門的に行うチームが課内に新設されることが予定されており、その組織を法令上位置づけるための組織規則改正の作業もついでに担当してます。

というのも、行政組織というのは、実は、省、局、課、室、○○官に至るまで、全部法令でその設置根拠が置かれているのです。なので、組織の組み換えをするたびに組織の設置ルールも改め直し、その組織やポストが担う事務を法令上に的確に表現する作業が必要になるのです。しかも他の組織やポストの事務と概念上明確に区別できる形で表現しなきゃいかんというのがまた難しいところです。

新しくできる組織については新聞でも何度か取りざたされて、ある新聞の1面では「建築Gメン出動!」などと大きく報じられていたこともありましたが、こういう組織の仕事を法文上どうやって書くのか、ここ1週間ほど苦慮していたところです。が、昨日ようやく納得の行く答えにたどり着けたな、という感触を得ました。


ほかに、外部の研修機関から、自治体で建築行政を担当している人たち向けの講習会で、建築関係の行政事件について判例の解説や訴訟上の問題点を中心に法律的観点からの講義をして下さいという依頼を頂いたので、2週間ほどかけて昨日、何とか授業のテキストを作り終えたところです。これから、具体的な授業の進め方を考えようというところ。

建築基準法というのは、普通に生活している分にはあまり身近な法律ではないかもしれませんが、大学で行政法を勉強したことがある人間にとっては、この法律ほど豊富な行政法上の問題点を提起してくれるものはないと言っても過言ではありません。行政法判例百選などにも、重要判例として建築基準法がらみの判例が多数掲載されています。

行政事件訴訟法との関係で言えば、建築確認の取消訴訟における処分性(消防同意は処分性なしとされた判例)や原告適格(周辺住民の「法律上保護された利益」について論じた判例)、狭義の訴えの利益(工事完了後の確認取消に訴えの利益なし)、行政指導の継続を理由とした確認の留保の違法性などについての判例は、法学部生の間でもかなり有名です。

また、違反建築物に対する是正命令の裁量性についても、従来の自由裁量説中心だった判例から、次第に不作為の違法性の余地を認める方向へシフトしつつある動向(いわゆる「裁量権のゼロ収縮理論」)など、興味深い論点が多数あります。また、こうした判例を分析すると、過去の法改正が様々にそれに対応すべく努力してきたんだな、という足跡に改めて気づかされたりもします。

最近では、民間の検査機関が行った違法な建築確認についての損害賠償請求があった場合、確認事務は本来的にはその建築物についての管轄権を有する地方公共団体に(その建物が神戸市内にあれば神戸市に)帰属するのだから、その地方公共団体が被告適格を有する、という最高裁決定が出され、俺ら建築行政担当者だけでなく行政法学者たちも驚かされたという例があります。

ほかにも、基準法第93条の2(建築関係書類の閲覧)が情報公開請求との関連で問題になった事例など、消費者保護法制にちょっと興味のある俺にとって「お、これは!」というような判例も今回、いろいろ資料に当たる中で見つけることができました。

逆に言えば、それだけ法的な難点を抱えているのが建築基準法であり、建築の世界なのです。建築は単に建築主の行為であるにとどまらず、様々な業者が関係する生産行為であること、さらに、建築物の周辺環境に大きな影響を与える行為であることから、建築をとりまくひとびとの間で様々な紛争が発生しやすい局面になっているわけです。また、そうであるからこそ社会的な需要に対応して様々な制度改正が繰り返されてきており、こうした特徴によって建築基準法は極めて特殊な法分野となっています。

これまで、仕事上はほとんど法改正ばかり携わってきたために、判例の分析など運用実務上の法的な問題点について集中的な分析をやったことがほとんどなかったので、今回の授業は、最初依頼をもらったとき「こんなの俺にできるわけねえ!」と正直びびりました。でも、これを機に、建築基準法が社会の中で果たしてきた役割、引き起こしてきた法的な問題、それに対して裁判所が提案してきた解決の枠組みについて、改めて学ぶことができたので、ちょうどよかったと思います。

はっきり言ってゼロからの勉強だったので、今度の授業がうまく行くか甚だ不安ですが、自治体で実務を担当しておられる方々のお仕事のお役に少しでも立てるよう、実のある講義にしたいと思っています。

年明けから仕事の話ばっかりで恐縮ですが、2年目をもうすぐ終わろうとしている俺にとってやっぱり今は一番仕事がおもしろい時期だし、やりがいのある仕事も多いし、将来の野望(?)にもかなり役立つ知識が得られる職場だし、とことん打ち込んでやろうと思っています。