政策の修正とソーシャル・マーケティング

消費者保護政策の話を書くと言っておきながら、先に友達のブログに反応。

そのブログで、

「行動を予めシステマチックにしておくことが効率的だが、あまりに硬直的になってもいけないので、適宜見直しが必要だ。そこで、見直しの方法すらシステマチックにしてしまう、という発想はどうだろうか」

という、なかなか示唆にとんだ主張が展開されていて、そこからアメリカの憲法とかにもそういう修正システムってなかったっけ?という話になったのでここで回答。


合衆国憲法の修正を可能にする条文てのは第5条のこと。これは、議会における修正手続(可決の要件)を定めた規定です。
これに基づいて制定当初の条文のうしろにどんどん「修正第○条」という形で、次々と付け足しがされていく形になってます。
ちなみに、制定当初は全7条だったが、いまやそのうしろに修正条項が27も付いてます。

他方、日本の憲法は、もちろん改正可能なシステムを憲法上置いていますが(第96条)、同条では改正を実施する際には国民投票を要件としているため、実際に憲法改正をやろうとすると投票方法を定めた国民投票法を別途制定する必要があります。現在の日本ではこの国民投票法が未制定のため、戦後の憲法は一度も改正がされたことがないということになります(だからいま、憲法改正論議と一緒に国民投票法案の議論が出ているわけです)。

とりあえず合衆国憲法第5条と日本国憲法第96条を見比べてみてください。


ちなみに、憲法だけでなく、最近の立法事例では、改正法の附則にいわゆる「サンセット条項」と呼ばれるものが付けられるのが通例で、

「政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする 」

ということを規定した条文が付いてます(時期は5年以外に、3年、7年、8年と法律の内容に応じていろいろ種類があるようです)。

これは、立法規制の妥当性をあとで評価するための規定で、規制強化が大好きなお役人にとっては、改正法の見直し時期が「悲しいときー、夕陽が沈むときー」みたいなものだから「サンセット条項」と呼ばれてます(と勝手に俺は思ってるんですが違うんでしょうか)。

ただ、これは強制力のある規定ではなく、5年たったからと言って必ず法改正がまた行われるわけではないです(そんなことになったら僕らほんとに過労死します…)。

おそらく法律上、見直しのシステムを書こうと思うとこの程度が限界で、あとは実際に見直し作業にあたる立案担当者があれこれ方法を考えればいいんですが、問題はだ、見直しをするための方法論がはっきり言って全然確立されていないこと。

前も「パターン化された立法技術論」というテーマで書いたけど、法律のシステムを改変しようというときに、他法の例とか前例とかそういうの調べるのに異常に時間がかかってしまっていて、政策が対象とするマーケットの状態や変化、対象者の行動変化に与える影響といった経済的な分析を時間かけて調査してる余裕が全然ないということ。

これ、ほんと深刻な問題だと思ってます。こうなる理由は、たぶんいざマーケット調査に乗り出そうとすると、日本全体が調査対象になるんだけど、それをやるにはあまりに時間・人員・資金が足りなさすぎるのが実情だからでしょう。制度改変に政治的・世論的なドライブがかかってるときは特にその傾向が強いと思います。

ということで、俺はもっと効率的に世の中を分析する手法を身に付けたいなぁと最近つくづく思うわけです…。