そういえば

いま世界バスケの試合のリプレイを見ていて思ったのだが、うちの中高のバスケ部って、全くと言っていいほど試合で蓄積したデータを普段の練習で生かしてなかった。どんなしょぼいチームでも最低限、次に挙げる2つのデータくらいは試合中に記録しとかんといかんのちゃうか?誰が何リバウンド取ったとかそういう個人単位のデータじゃなくて、チームがゲーム中に示した強みと弱みを立体的に把握できる情報が必要なのである。


①得点状況の時間別推移

データの取り方:普通のスコアシートのマーク欄に得点した時間を記入するだけ。


②ショットが放たれた地点、ショットをした選手、ショットの成否

データの取り方:ハーフコートの図が1枚に10くらい印刷されたシートを30〜40枚用意しておいて、1ショットごとにショットの地点をマークして、放った選手の背番号、成否の○×を脇に記入。それをショットが放たれるたびに、次々と次の図に記入していくだけ。

※ 高校生の試合で、両チーム各60〜70点、ショット成功率を25%と仮定すると、両チームで放った総ショット数は得点数の4倍ということで約300本のショットが1試合あたりに放たれるとすれば、シートは30〜40枚あればOK。

どっちも大した負担になる作業ではない。2〜3人いれば十分だし、クオーターごとで担当者を交代させれば記録する集中力も持続する。


この2つのデータから分かることは、

①・・・チームの立ち上がり具合

ゲーム開始直後に得点を重ねるタイプなのか、それともスロースターターなのか。

データをもとに時間軸×累積得点数の線グラフに表現し、相手チームのグラフと重ね合わせれば、例えば、相手が得点を積み重ねているときに自分たちはずるずる得点差を開かれていっているのかなど、試合全体の流れの中でのチームの弱点が分かる。

サッカーと違い、バスケはスコアが目まぐるしく累積するスポーツだから、得点の伸び方が状況把握のための一つの指標になる。


②・・・オフェンスの「癖」とディフェンスの「穴」。

例えば俺の場合、ゴールに相対して左斜め45度が一番ショットを打ちやすいし確率も高い。選手ごとにそういう癖がある。それをチーム全体としてみた場合、どういう偏りが生じているのか。相手のディフェンスにはまって苦手なほうのセットポジションへ追い込まれていなかったか。あるいは相手の「穴」になっているところはないのか。

また、ディフェンスについては、どのポジションからだと一番ショットを決められていて、どこのポジションだと鉄壁の守りを実現できているのか。明らかにアウトサイドが得意な敵チームに対して無戦略にゾーンディフェンスで挑んでいなかったか。外角プレーヤーにインサイドで得点されてしまう場面が多くなかったか。などなど。

こういう面的な得手・不得手の把握に役立つ。


③ さらにこうやって得た試合ごとのデータを総合・比較してみる。

そこから、チームのどの部分が試合ごとに変化しているのか・いないのかを知ることができる。
また、線的なデータである①と、面的なデータである②を組み合わせて、ゲームの状況を立体的な記録として残すことができる。


この2つのデータを基礎に、あとは余裕と必要に応じて、チームとして欲しいデータを増やしていけばいい。


試合直後であればデータなしでゲームの反省ができるかもしれないが、時間が経って記憶が薄れて来ると、その試合で見出したチームの強み・弱みと次の試合までの課題がぼやけてくる。

うちのチームはひどいことに、毎回、試合後の「何となくこういうところに問題があると思いました」という印象論に基づく課題抽出で済ませて、あとは監督と一部の能力の高い選手のセンスに任せていた。

うまいやつは「細胞で感じる」ことができるからそれでもいいかもしらんが、俺みたいなへぼ選手にとっては、何がチームの問題で、次までに何をすればいいかすら具体化できない(笑)

試合に出れない1・2年生がたくさんいたんだから、こいつらにチームへの参画意識とゲーム観戦への集中力を植えつけるべく、無駄に試合を眺めさせるのではなく、こういうデータ取りの役割をきちんと与えて戦略的にゲームの流れを追う方法を提示してあげるべきではなかったのか。

スポーツはもちろん運動能力がものを言う世界だが、最も効率的かつ効果的にチームを成長させていくには、具体的な根拠から弱点を割り出し、そこを重点的に強化していく練習スタイルをとるべきではないのか。

こういう風に、誰もが理解できるデータを使いながらチームの現状を描写することで、チームがどういう筋道で、どういう課題をクリアしながら、どういうチームに成長していきたいのか、ということを明確なビジョンとして全員で共有する必要があるのではないか。そういう基礎があれば、何をやればいいのかがわかって練習が楽しくなるし、あとは、各プレーヤーが自分なりに「ここはもっとこうすればいい。」という+αの創意工夫が生まれてくる余地が出てくる。


チームを離れて6年も経ってようやく、自分たちのチームの最も弱かった部分に気づいた始末。

やれやれ。仕事ではこの反省を生かそうと思う。