異動してから

めっきり仕事のやり方がまずくなったと思って凹んでいたが、だんだん調子が上がってきた。

全部を全部誠実にこなすのは今の俺の能力では無理だが、これは絶対大事!と思うポイントを見定めてきちんと仕事こなしてけば次第にまたこの新しいステージにも対応できるようになるだろう。

異動に伴って、また新しい上司が増えたわけだが、今度から新たにお世話になる上司は実に指示がバクっとしていて、よく注意してないとそれが仕事の発注なのかどうかよく分からんことが多い。で、あ、これは仕事の発注じゃないよなと思ってほっとくと、たいていあとで「おい、あれどうなった?」という調子なので、うかうかしていられない。

といって、この上司はずぼらな人かというとそれは正反対で、恐ろしく政治的なセンスと嗅覚に優れた天才的な「情勢コントローラー」だと俺は思う。誰が何を求めてるのかというポイントを極めて的確に見抜き(この「相手の意図を正確に察知する」能力が一番重要)、またそれが自分たちの意図するところと違うときは、ほんとに微妙な技術で少しずつ軌道修正して実現可能な方向へと合意形成を誘導する。これは普通のひとにはそうそうできるワザではない。

行政官にはたぶん2タイプあって、こういう政治的なセンスに優れたタイプと、緻密な制度設計や法的な識見に優れたタイプのひとがそれぞれいる。上のポストほど、前者の要素を備えた人が多い。なぜなら上のポストの人間は幅広い合意を形成することが最大の仕事であって、緻密な部分は部下に任せておけばいいからだ。だから、そういうセンスを持たない人間が上にたって陣頭指揮をとった場合、その組織がたどる運命の行く末はだいたい目に見えている。空気読めないやつは上に立つべきではないのだ。空気が読めるボスとは、情勢の変化を敏感に察知して、必要があれば組織の向きを軌道修正させられる能力があるボスを指すと俺は思う。

これは当然、行政の世界に限った話ではないだろう。


とにかく、また今までとは違ったタイプの上司のもとで仕事をすることになり、彼から学ぶことは非常に多い。

彼の発注がバクっとしたものにならざるを得ないのは、俺と彼との間で進めてる検討事項がこれまた日本の法制度的に十分な解決がされておらず、いまのところ学者の間でも有効な政策的法制的手段が発見されていないからだと思う。こういう案件をやれるからこの世界は面白い。

また、バクっとした発注ということは、裏を返せばいろいろ論点考えて答え出して、そこに反論できないかを考えて、というプロセスを自分で計画して作業を進めていくことになる。もちろんチームプレイだから行き詰る前にさっさと相談して遅滞なく作業を進めることが大事ですが。やっぱこうでなくちゃ仕事は面白くない。

1年目とは違った経験のできるチャンスがごろごろありそうで楽しみだ。