Mr.&Mrs.スミス

('05米、監督:ダグ・リーマン、主演:ブラッド・ピットアンジェリーナ・ジョリー

「夫婦で殺し合い」という言葉でググってみたところ、この映画のことしか出てこない。もしかして「夫婦で殺し合い」を扱った初の映画なんだろうか。

まーたぶん斬新な切り口なんだろう。

ウソで塗り固められた夫婦生活が破綻して殺し合いの局地に達してようやく本当の愛に気づく、というどう考えても現実には起こりそうもない脚本をおおまじめにやってのけたのがこの映画のすごいところだ。ブラピとアンジェリーナという美男美女コンビでなければこの映画の「アホらしやの鐘がなる」(※)空気は絶対成立しえないだろう。

※我が家でしか通用しない一般用語

そして、こんなにも主人公たち以外の存在を雑に描いた映画もなかなかないのではないか。ブラピとアンジェリーナ以外は設定も含めてどうでもいいと言い切ってるようにしか思えない。

普通ここまで徹底すれば主役に対するフォーカスは自動的に定まるものだが、どういうわけかこの映画の主人公もぼんやりした人物像でしか俺には捉えられなかった。

俺の観方が悪いという以外の理屈を探ってみよう。

そもそもこの映画は設定自体が漠然としたものになっている。夫婦が結婚したのはいつかとカウンセラーに問われた主人公夫妻がの答えが互いに食い違う、というところからしてそうだ。他の部分をとってみても、不思議なくらい漠然とした状況で固められている(夫妻がそれぞれ所属する「組織」等々)。

唯一明確なのは、夫婦が殺し合おうとしている、という異常な状況設定だけ。


となると、こりゃ制作サイドはわざとピンぼけした世界にしたんじゃないかという気すらしてくる。

あまりに突拍子なこの映画の世界を誰でも追体験できるようにするため、一見どこにでもありそうで、実はどこにも存在しえないあいまいな世界観をあえて用意した。そうでなければ、大掛かりなスタントアクションやカーチェイスをこの映画の中に持ち込むことなんてとても収まりがつかない。

と善意に解釈してみることもできるが、実際のところはどうなんだろう。

とりあえず唇だけであんなにセクシーさを表現できるってのはやっぱすごいねと思ったことのほうが大きい。