届け出業者、「無届け」より厳しい…高圧ガス法罰則に矛盾

まずはニュース記事を。

1月16日3時5分配信 読売新聞

 溶接に使う酸素ガスなどの取り扱いを規制する高圧ガス保安法で、届け出業者よりも無届け業者に対する罰則の方が軽くなっていることがわかった。

 東京都知事に無届けで酸素ガスを販売したとして、警視庁が都内の溶接材料販売会社を同法違反の疑いで摘発して判明。同庁は所管の経済産業省に「罰則に矛盾がある」と指摘した。無届け業者の摘発は、1951年施行の旧高圧ガス取締法を含めて例がないというが、矛盾は57年間も続いていた。

 警視庁生活環境課によると、高圧ガス保安法違反の疑いで15日に書類送検されたのは、江戸川区松江6の「ミズショウ」と同社社長(59)。同社は2006年5月〜07年4月、無届けで都内の建設会社など4社に酸素ガス約500本を計約425万円で販売した疑い。


ほー。

で、条文。

新聞記事からはよく分からんが、おそらく無届販売の罪というのは83条2号の6(20条の4違反、罰金30万円以下)のことで、届出業者のほうが重いとされる罪はおそらく82条1号(20条の61項違反、罰金50万円以下)じゃないだろうか。

高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)

 (販売事業の届出)
第二十条の四 高圧ガスの販売の事業(液化石油ガス法第二条第三項 の液化石油ガス販売事業を除く。)を営もうとする者は、販売所ごとに、事業開始の日の二十日前までに、販売をする高圧ガスの種類を記載した書面その他経済産業省令で定める書類を添えて、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一・二 (略)


 (販売の方法)
第二十条の六 販売業者等は、経済産業省令で定める技術上の基準に従つて高圧ガスの販売をしなければならない。
2 都道府県知事は、販売業者等の販売の方法が前項の技術上の基準に適合していないと認めるときは、その技術上の基準に従つて高圧ガスの販売をすべきことを命ずることができる。


第八十二条 次の各号の一に該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第十一条第一項若しくは第二項、第十五条第一項、第十八条第一項若しくは第二項、第二十条の六第一項、第二十二条第一項、第二十八条第二項、第三十七条、第四十四条第一項、第四十五条第三項、第四十六条第三項、第四十七条第二項、第四十九条第五項、第四十九条の二第一項、第四十九条の三第二項、第四十九条の四第四項、第五十一条第二項、第五十六条の四第二項(第五十六条の六の十四第四項及び第五十六条の八第三項において準用する場合を含む。)又は第五十六条の五第二項(第五十六条の九第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
二〜五 (略)


第八十三条 次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一〜二の五 (略)
二の六 第二十条の四の規定による届出をしないで高圧ガスを販売した者又は虚偽の届出をした者
二の七〜七 (略)


確かに業法や資格法では、許可や届出といった規制にかからしめることがまず第一の目的だから、それを逃れようとする行為が最も悪質な違反行為となるわけで、当然罰則の体系の頂点に位置づけるべきという意見も分からなくもない。

けど、規制を受けている人間が、遵守すべき技術基準に適合しないものを販売する行為と、無届で販売する行為のどちらが立法上の可罰的違法性が高いかというと一概には結論が出ないだろう。警視庁の「矛盾している」という批判がどういう根拠によるものなのか、是非知りたい。

行政刑法はそもそも機能不全に陥っているので、たまにこういう風に現実の場面で適用されると矛盾や不備があっさり発覚したりする(耐震偽装のときもそう)。

全部、というわけにはいかんと思うが、少しずつそういう法の至らないところを修正していけたら、多少は世の中のお役に立てるんじゃないだろうか。