チョコレートとインターナショナリズム


研修が終わって早速仕事に来いと言われて久しぶりに職場に顔を出した。案の定俺の机は物置になっていた。しょぼーん。

研修中も一応職場の状況がどうなっているのかは情報をもらっていたが、実際に帰って来てみると予想以上にひどい状態でみんな疲弊しきっている。


タコ部屋では、俺が研修に出てから作業量が格段に増えたことに伴い、ある怪しげな食い物が流行りだしたという話を聞いた。

その怪しげな食い物とは「Sho-ka-cola」という名前の代物である。

何と1935年にドイツで発売された滋養強壮チョコレートで、戦時中のドイツ軍兵士の御用達だったらしく、これを食うとめちゃくちゃ冴え渡るが効果が切れると禁断症状に陥るという実に危険な代物である。

平たい円盤型の缶詰に入ったこのチョコレートは、兵士が戦場で手軽に開けて食べられるよう、片手で蓋を開閉できる特殊な作りの容器に入っている。

こういう話を聞くだけで何て危なっかしい食べ物だ!どこでこんなの買ってきたんすか!と聴いたら、

「いや、銀座のソニプラだけど。」


…。

何でそんなもん売ってんだ。


試しに一口食ってみたが、確かに最近流行の99%カカオチョコ系の濃い味である。しかし、すでに俺の神経は麻痺しているのだろうか、何の精神的変化も起こらなかった。何じゃい。


と、ここで上司から驚愕の一言。

「そういやお前、2年目研修行ってたから聞かされてないかもしれんが、10月1日で係長に昇進したぞ。」



…は?


何それ。何の内示ももらってませんでしたけど。



「同じ課内での昇進だから何の内示もなかったんじゃないの(笑)」


「(笑)」ってあんた…。


一応前から話は聞かされてて、10月くらいだと思うよとは言われていたので薄々は知っていたが、月の変わり目前後で本課から何の音沙汰もなかったのでやっぱりあの話は冗談だったんかなと思っていたら、本人の知らないところで勝手に事実化していたらしい。何やそれ。

係長といっても空席ポストを埋めるために都合のいい人間をスライドさせただけで、いわゆる「名刺係長」というやつである。給料はもちろん上がるわけもない。


で、何係長かというと「国際係長」だそうだ。


…まじうそくせー…。



エクストリームリィ・ドメスティックなうちの課でインターナショナルなジョブなんざオールモスト・ノー・エグジステンスですよ。

あるとすれば建築基準の国際相互承認の推進って名目で世界各国との折衝をやっててしょっちゅう海外出張行ってる調査官ポストが課内に一つだけあるんだけど、その仕事はそのポスト専属になってて、建築技術に関する知見が全くない俺にそんな仕事を回してもらえるはずもなく。

せめて海外出張とか行かせてくれよん。海外建築事情を見て回るとかさ。ぶつぶつ。

というわけで今までと全く変わらず法規係員の仕事をさせられるだけなのですが、何か名前だけ変わったので、名刺だけ新しく刷っとこうかな。こないだ新しく作ったばっかなのにもう無駄になった…。アホくさ。