みゃーくの旅②

07:30 むっくり起床。しかし空模様はどんより。俺の心もどんより。ふてくされて8時半までふとんに潜って買ったばっかのワンピース最新刊を読む。
08:30 だんだん晴れてきた。機嫌がよくなったのでホテルの朝食。ぶっちゃけマズい。
09:30 チェックアウト。トランクだけ預かってもらって平良港へ。伊良部行きの次の便まで時間があるので朝のパイナガマビーチで涼む。昨日よりずっと海の色が鮮やかだ。水がきれいすぎる。
10:00 伊良部島へ向けて出向。甲板に出る。水しぶきに光が反射して虹がかかる。すごい。だんだん島が近づいてきた。
10:15 到着。船着場の案内所で地図をもらって愕然。歩いて回れると思ってたらこの島意外にデカい。焦ってレンタカーを借りる。こんなことなら宮古島で借りて船に積んでこればよかった。レンタカー屋のおっちゃんにだいたいの島の回り方を教えてもらって出発。
10:30 ふなうさぎバナタ。「船を見送る岬」の意。この島に11月に飛来するサシバをかたどった巨大な展望台がシンボル。断崖絶壁の真下に広がる環礁に向かって大海原から波が押し寄せる。こんなに高いところからでもはっきりと水底が見える。昔は日本の全ての海がこんな感じできれいだったはず。
11:15 佐和田の浜。この浜には18世紀後半の大津波に乗って運ばれてきた巨岩がごろごろ転がっており、引き潮になると実に不思議な光景。この地形を利用して「魚垣」(ながき)という特殊な漁法が今も行われているという。要は満潮時に迷い込んで干潮時に逃げられなくなった魚をとるという濡れ手に粟的手法である(すみません…)。波打ち際にたくさんアーサ(いわさ)がたくさん落ちていた。この浜の左端からジャンボジェットがひっきりなしに離発着を繰り返す大迫力の光景が見える。伊良部島と細い水路で隣り合わせになっている下地島に訓練用飛行場があって、飛行機がタッチ&ゴーを繰り返す様子が見える。何か知らんけどむちゃくちゃすごい。滑走路の端から離発着を眺める。飛行機がすぐ頭の上を飛んでいく。うをー!
12:00 通り池。実に神秘的な場所。島の端っこに丸い大穴が二つ開いていて池になっている。実は底の部分でこの2つの池はつながっていて、しかも海ともつながっている。でも海の水とは思えないくらい深く濃い蒼色の水を湛えたこの池。海側から底を潜って池に入るコースが人気のダイビングスポットになっているらしい。説明板を見ると、マンタやサメなんかもこの池に迷い込んでくるらしい。
13:00 渡口の浜。これまた波の静かなめちゃくちゃきれいな浜。気温も上がってきて打ち寄せる波が気持ちいい。6人くらいしか浜辺にいなかった。ここでまたもや職場から電話②。禿萎え。今回は俺がうっかり積み残してた案件なので致し方なし。
13:50 島をぐるっと回って車を返す。船着場の売店で弁当を買って食いながら次の便を待つ。グルクンのから揚げやらティビチーやらいろんなおかずが山盛りになってクソ豪華なのに何とお値段350円。驚愕。あと、伊良部島名物の「うずまきサンド」も購入。あとで食ったがクリーム部分の砂糖がじゃりじゃりしてあんまりうまくない笑。
14:30 伊良部島から宮古島へ。予約してあったレンタカー屋の兄ちゃんがホテルに迎えに来てくれてたのでそのままレンタカー屋へ連れてってもらい、車で一路北上!サウンドはとりあえずアイランドBGMってことでベタにDef Tech。
15:00 砂山ビーチ。ビーチに入るためには天然の高い砂の山を超えていかねばならないことからこの名がついた。足場が悪いので六甲の坂より辛い。頂上に着くと、真っ白な砂の坂のずっと下のほうに真っ青な海が広がる。信じられない光景だ。坂を下っていくと、浜辺で明らかに中学生くらいの地元の悪ガキどもが浜辺でビール大会をしていた。そのくせ、よそ者の俺が来ると「こんちわー!」と礼儀正しい。この浜のシンボルは、波で削られてできた岩の崖の大穴。窓のように向こうの海が見える。せっかくひとけのない浜で気持ちよかったのにあとからぞろぞろツアー客どもが来て写真をひとしきり撮りまくり。萎え。この浜は結構波がきつい。聞いたところ、海流がもろにぶちあたる場所だからだそうで、風も同じ方向から浜へ吹きつける。砂山がめちゃくちゃ高くなったのも風の力だという。自然の威力に脱帽。
16:00 情報誌で目をつけていた外周道路沿いのおしゃれな手作りカフェへ。庭先の座敷テラスでぼけーっと傾きが大きくなった午後の太陽を見ながらココナッツアイスとグァバジュース。この店は、インディアンみたいな雰囲気の兄ちゃん(「ゲンちゃん」と呼ばれていた)とめっちゃ美人な奥さんの2人で切り盛り。2人とも移住者。観光客の来ない1月・2月は本当に経営が苦しいらしい。今年度は思い切って冬は店を閉めてしまえるくらいにしたいと言っていた。同じときに別席にいたレンタカーを営むおっちゃんも同じようなことをぼやいていた。「だけどこの島でレンタカー屋のつらいところは、湿度の高い潮風が吹くことだ。レンタカーで年収1千万円も可能だが、サビの進行で車の買い替えサイクルが早まるから利益率が低い。」
17:00 島の北端、狩俣地区まで車を走らせ、昨日の晩に予約を入れていた民宿へとりあえず向かう。小錦みたいな体型の豪快なおばちゃんと、俺の3つ上の兄ちゃんと俺と同い年の妹さんが経営する宿。この建物がまたこの地区としてはかなり近代的かつデザイン性が高いなと思っていたら、なるほど17年前にこの宿を開いたときに内地の設計士に頼んで作ってもらったらしい。屋根を円形にくりぬいてつくった天窓なんかどう考えてもこの地域の通常の家にはないものだ。部屋もおもしろい。部屋の壁の足元に小窓がついていて、風が気持ちよく通り抜ける。何とも粋な作りだ。

17:15 食堂でおかみさんと話をしていたら、ちょうど今夜の別のお客さんである一人旅のおっちゃんが散歩から帰ってきた。聞くと、このおっちゃんもダイビングのライセンスを取りに来ているという。俺もせっかく宮古島来たのだからダイビングしたいと思っていたが、一人で参加するのもこえーなと思っていたのでちょうどよかった。おっちゃんが利用しているダイビングショップに早速連絡を取り、明日体験ダイビングを2本やらせてもらうことに。
場所は、初日にタクシーの運ちゃんと話した「やびじ」。漢字では「八重干瀬」と書く。宮古島の北東へ船で20分ほど行った沖合いにそれはある。大海のど真ん中にリーフの群生があって、南北13キロ、東西8キロほどに広がる日本最大級の珊瑚礁地帯だそうだ。この珊瑚礁の最も驚くべき事実は、大潮の日になると水が引いて、環礁の一部が1、2時間ほど水面上に顔を出す。それがエリア一帯に広がるので、突然陸地が出来たように見える。「幻の大陸」と呼ばれる由縁である。珊瑚礁が干上がる日には、フェリーで多くの観光客がこの幻の大陸へやってくるらしいが、やはり珊瑚を踏み荒らしてしまうなど残念な事態が起こっているという。明日の4月8日は残念ながらこの大潮の日には当たっていないので珊瑚礁が顔を出すという信じがたい光景は見られないが、ダイビングでこの世界を満喫することにした。
ショップを紹介してくれたおっちゃんは、実は今日がオープンウォーター取得の初回レッスンで伊良部島の通り池に行ったのだが、同じコースに参加していたおばちゃんが海側から通り池へ出るための海底洞窟を通り抜けるときにパニックになって水を飲んだらしく、あえなくレッスン中止。おかげでおっちゃんのライセンス取得日数が一日ずれ込んだ。哀れ。
18:00 荷物をおろしたあと、島の最北端かつ最西端である西平安名岬へ。溶岩質のごつごつした岩場が岬となって海へ突き出ている。猛烈な風が吹き付ける。足元に気をつけながら岬の先端まで行って見ると、よくまぁこんな危険なところでという感じの豪快な釣り人夫婦発見。風が強すぎるので夕陽ポイントには不適と判断。
18:20 宮古島の北端からすぐ隣の池間島へ。総工費99億円という大きな美しい橋を超えて、島をサクッと一周。まじで何もない。島の入口の浜茶屋と島の真ん中のガソリンスタンドくらい。それと島にあまりに不似合いな大きな小学校。この池間島は以前はカツオ漁と珊瑚加工が盛んで非常に経済的に潤っており、1周20分も要しないこの小さな島に何と映画館が2つもあった時代もあったらしいが、いまは当時の繁栄の面影は小学校の異常な立派さにしか残っていないようだ。
18:50 池間島はどうしようもないので、再び橋を越え、宮古島側の橋のたもとで夕陽が沈むのを眺める。今日は昨日よりもっときれいだった。
19:15 宿へ戻る。今夜の泊り客は例のおっちゃんと、この宿にもう何度も泊まりにきているというおねーさんの3人だけ。みんな食堂に集まって夕食。信じられないくらい豪華だ。「オジサン」という変な名前の魚(和名「かたかし」)の煮付け、刺身、炊き込みご飯、ほうれん草のおひたし、いとこんにゃくとわかめの和え物、パパイヤの春巻き、味噌汁。うますぎる…。
20:00 食事を終えて酒を飲みながらつまみをかじっていたら。この宿の人気者の飼い犬アーサが菓子ちょうだいというウルウルの目で寄ってきた。太るから上げられないが、実はこの犬、泡盛を飲んでゲロを吐いたこともあるくらいのやんちゃな女の子です。すげーな。何かVAの中にもこんな感じのやついたような気が…笑。ちなみにこの犬は2代目で、何と宿のお客さんが近所の馬小屋にこの子が捨てられてるのを見つけて拾ってきて、そのまま置いて帰ったらしい。何たるアレ。しかもそのお客さん、あとで「アーサ物語」とか題して、その犬を拾った際の一部始終を実にうまいこと収めた写真の束を送ってきたらしい。初めからこれが目的で拾ってきたんじゃ…汗
この宿のすごいところはまだまだあって、ビールは1杯500円だが、泡盛はタダで飲み放題ということ。図にのって死ぬほど呑んでしまった。さらにすごいところは、近所のひとが何時だろうとかまわず次々この宿に呑みに来るということ。しかもみんなだいたいすでに先にどっかで呑んできてかなりぐでんぐでん状態になってからやってくる。
この島では、もともと10%程度に水で薄めてあるのを呑むのが普通らしい。お店でも薄めてあるボトルを販売している。こうした呑み方は「おとーり」という島独特の伝統的な風習から来ている。これは昔宮古島に運び込まれるコメの量が少なく酒の生産量が少なかった時代に、少ない酒をみんなで分け合って飲むために行われてきた風習。サトウキビの借り入れを終えて、とか結婚や出産など何かめでたいことがあったときに、関係者が集まり、輪になって一つの大きなボウルのような器を使って回し飲みをする。そのとき、誰か一人親を決めて、前口上を述べてから1杯飲む。そして、集まった者たちが海の仕事をする者なら左回り、畑の仕事をする者なら右回りで杯を回していく。最低でもこれを全員が親になるまで続ける。こうすることによって、めでたいときに、少ない酒をみんなで共有する「おとーり」という風習が生まれた。これはいまでも日常的に行われており、その日のキビ刈りを終えたおっちゃんたちが浜辺でおとーりをやっていたり、なんてのもよく見かけるという(俺は残念ながら遭遇できず。遭遇できたとしても車だから無理ですが…。)
24:30 あんまりにも楽しくてこの調子で行ったらやばいなと思っていたが、次の日は朝からダイビングだし0時半にお暇。部屋戻って速攻爆睡。ほんとはダイビングの前夜に飲みまくるなんてご法度極まりないんですが…。まぁまぁまぁ。