[映画][ニュース]同性愛、人種問題…アカデミー賞候補に社会派作品台頭

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 3月5日(日本時間6日)に発表される第78回アカデミー賞の作品賞候補が、例年になく、社会的なテーマを扱った硬派の作品で占められ、米国で注目を集めている。

 なかでも、最有力とされる「ブロークバック・マウンテン」は、ゲイに対する偏見が強かった時代に、同性愛を貫いた二人のカウボーイが主人公。一部の映画館で上映を取りやめたほか、保守系団体から批判の声も上がっている。

 台湾出身のアン・リー監督による同作品は、前哨戦のゴールデン・グローブ賞などの主要賞を総なめにし、アカデミー賞でも最多8部門で候補になった。

 その一方で、保守的な風土で知られるユタ州の映画館は、予定されていた同作品の上映を、直前になって取りやめた。「内容を問題視したのが上映中止の原因ではないか」と米メディアの間で見られている。

 保守系団体「家族研究協議会」の幹部シャーメイン・ヨーストさんは、「米国でカウボーイといえば、男らしさの象徴。映画はそのイメージを損なう」と反発する。同性婚を認めるかどうかが全米で論争になっているだけに、「賛成派を利する内容では」と不満げに語った。家族研究協議会のホームページは、映画を批判する文書を掲げる。

 アカデミー賞では、過去にゲイを演じた男優の受賞などはあるものの、業界紙の編集者によると、「同性愛の問題に正面から取り組んだ映画が、作品賞を取ったことはない」とされ、選考の行方が注目される。

 このほかにも、ロサンゼルスを舞台に人種問題を扱った「クラッシュ」、メディアと権力の闘いを描いた「グッドナイト・アンド・グッドラック」、名作「冷血」の執筆過程を追った「カポーティ」と、今回の作品賞候補は、低予算ながら、批評家の評価も高い秀作がそろった。

 近年のハリウッドでは大手の映画スタジオが収益重視の観点から、過去のヒット作のリメークや娯楽大作に走る傾向が強かったが、今年の場合、「キング・コング」など大作は、いずれも選に漏れた。

 「ミュンヘン」が作品賞候補になっているスティーブン・スピルバーグ監督は、ニューズウィーク誌による映画監督座談会の中で、「(社会派映画の台頭は)ブッシュ政権が2期目に入った影響で、映画人が主張し始めたのでは」と分析。「ミュンヘン」自体もテロと報復の連鎖を描いた作品だ。スピルバーグ監督は、「(政治家に期待できない以上)我々が意思表示していくしかない」と発言し、今後も硬派の主題を扱っていく意向を表明している。
(読売新聞) - 2月19日12時51分