[映画]シンデレラマン
(’05米、監督:ロン・ハワード、出演:ラッセル・クロウ、レニー・ゼルウィガー、ポール・ジアマッティほか)
2週間近く前に、仕事から帰ってきてそのまま明け方ごろ観た。
世界恐慌という時代の荒波に飲み込まれた人気ボクサーの一家が、必死に生きようとする様を素材として、「失敗しても努力すれば再びチャンスが巡ってくる」というメッセージを発信する。
でもそんなことはどうでもよくて、主人公のジム・ブラドッグの心の優しさを描く筆致がすばらしい。
あるときは、炭鉱労働で疲れ切って帰宅したにも関わらず、すすでベッドが汚れて妻の手間が増えるのを避けるために何も言わずに床で眠りにつくさりげなさ。
あるときは、「どんなに貧しくなってもお前をよそにやったりしない」という息子との約束を意地でも守るために、恥をしのんでボクシング協会の面々に金の工面を陳情しにいく不器用さ。
いろんな節々にこの男のいろんな側面が垣間見えて、それでいて統一性があって、おもしろい。
この映画を気持ちよく観れるもう一つの理由は、悪役がどうしようもなく悪役だからである。よくもまぁこれだけ悪そうな顔した役者を連れてきたなと。金満家で強欲なプロモーター、すでにリング上で2人も殴り殺したディフェンディング・チャンピオン。
こいつらの強烈な個性と、強いくせに控えめなブラドッグの組み合わせがいいのかもしれない。