メモランダム

①既遂

行政刑罰を含めた刑事法の世界における解釈論上の既遂の考え方と、立法政策論上のそれとは全く別物であることに気づいた。
前者はそこにある条文から実行行為の終了時期を割り出す作業だが、後者はそんな判断基準はない。むしろ、行為の違法性、行為者の責任を既遂として扱うにふさわしい時点を立法者が確定する作業である。

何とも自分を棚に上げた高慢な作業だとつくづく思う。


②法の射程

法には法の目的と体系から導かれる射程範囲があり、それが場合によっては法の存在意義そのものを確定している場合があるらしい。

特に複雑に交錯する多数の行政法間の世界では、個別の事案について適用される法律の関係を解きほぐす上で、法の射程には十分注意を払う必要がある。同様に、それは立法を行う場合にも言えることで、既存の法律群が何層にも折り重なって有する射程を見極めた上で、どこに法の空白(これを法のケンケツ(変換できん)と呼ぶべきかは分からん)があるのか、そこを法律で描いてしまうことが既存の法律の予定しているのか、立法対象とする部分が既存の法の射程を侵害するものになっていないかを検討する必要がある。


行政法の建前と本音

行政法が対象とするのは行政と私人の作用関係、救済関係、及び行政主体間の調整関係である。しかし、一見1/3の割合に見える行政間の調整関係が、実は実定法としての行政法のうち、ほとんどの領域を占めているのではないかという気がしてきた。

およそ「法律事項」と呼んで官僚たちが内閣法制局を納得させるべくやっきになって捜し求めるそれは、本来行政法が最も配慮すべき私人の権利義務関係ではなく、むしろ行政主体・準行政主体間の権利義務関係に焦点が当てられているように思える。

以上。