ひさびさにギョーカイ裏話

今日からお仕事再開です。しょっぱなから豪雨ってどーゆーことですか。あーうぜー。

今日はやっとこさ初めて「読み合わせ」なるものをやりました。

法令を審査する部署に持っていったり、官報に載っけたりする前には、必ず原稿に字句の間違いがないかチェックするわけですが、どんなに大量かつ細かい文章であっても人力でいちいちチェックするのがこの業界のしきたりであります。2人一組で、かたいっぽが文章を読み上げて、もうかたっぽがそれを聞きながら文字をチェックするのです。やっぱ一字でもミスがあるといかんでね、社会に与えかねない影響を考慮すると。(というのが建前)

まぁ出版社ももちろん読み合わせくらいやるわけですが、うちの業界のやり方は極めて独特だろう。何が独特ってその読み方である。

条文の内容とスタイルが次のようであった場合、

第五十九条 次に掲げる者は前条の規定の対象から除くものとする。
 一 都道府県知事の認定に基づき一定の資格があるとされた者
 ニ (省略)
2 前項に掲げた者で、△△法第十一条第五項又は第十二条若しくは第十三条の適用を受ける者はこの限りではない。

これを字句間違いを探すために読むとき、うちの業界人どもはどう読むか。こう詠む。

ダイゴトオキュウジョウ イチジアケ ジニケイゲルシャハゼンジョウノキサダノツイゾウカラジョクモノトスル マル カイギョウ
イチジサゲ ヨコイチ イチジアケ トドウフケンチジノニンテイニキヅキイチサダノシカクガアルトサレタシャ カイギョウ
イチジサゲ ヨコニ (省略)カイギョウ
タテニ イチジアケ ゼンコウニケイゲタシャデ ポツ △△ホウダイトオイチジョウダイゴコウソウハダイジュウニジョウジャクシクハダイジュウサンジョウノテキヨウヲウケルシャハコノゲンリデハナイ マル カイギョウ

・・・。
宇宙人の言葉みてーだ。

単語ごとに読み方を洗い出してみると、

五十九=ゴトオキュウ(≠ゴジュウキュウ)
次=ジ(≠ツギ)
掲げる=ケイゲル(≠カカゲル)
者=シャ(≠モノ)
規定=キサダ(≠キテイ)
除く=ジョク(≠ノゾク)
一=ヨコイチ(≠イチ)
2=タテニ(≠ニ)
基づき=キヅキ(≠モトヅキ)
、=ポツ(≠テン)
又は=ソウハ(≠マタハ)
若しくは=ジャクシクハ(≠モシクハ)

ちなみに一字空けたり下げたり改行したりしてるところはいちいちその旨を言います、イチジアケとかイチジサゲとかカイギョウとか。

気持ち悪いったらありゃしない。

しかし一定の合理性もある。

例えば規定という語にしても、キテイという読み方をする語は他に「規程」(「裁判所規程」なんかでよく使う)があるわけで、漫然とキテイと読んでいると実は字が違ってるかも、なんてこともあるわけで。

そういう事態を回避するために、大昔から連綿と続いてきた伝統が今も常識としてまかり通ってるのがこの世界のようです。

これを読み合わせの範囲内で使ってるならまだ許される。仕事上必要だから。しかし問題は、この読み方を日常生活でもついつい使ってしまう業界人が非常に多いということである。


「あいつって○○なひとだよね」というべきところを

「あいつって○○なシャだよね」などと真顔で言うひとがいかに多いことか。


「この規定間違ってない?」というべきところを

「このキサダ間違ってない?」と言ってしまう。


あはれなり、ギョーカイ人。俺はそんな人種にはなりたくないなぁ…