モーターサイクル・ダイアリーズ

('03英米、監督:ヴァルテル・サレス、出演:ガエル・ガルシア・ベルナルロドリゴ・デ・ラ・セルナ)

カストロと並ぶキューバ革命の立役者、エルネスト・”チェ”・ゲバラがまだ大学の医学部生だったころ、親友のアルベルト・グラナードともに、故郷ブエノスアイレスから南米大陸をバイクで1周する冒険旅行を、2人の手記をもとに映像化した作品。製作総指揮にあたったロバート・レッドフォードが長年あたためてきた企画を、「セントラル・ステーション」で一躍世界中の脚光をあびたヴァルテル・サレスが監督。


別に俺はゲバラ自身に興味はないし、彼がその後どういう思想に傾いて、どういう行動を引き起こしたかとか、どうでもいい。


しかし、旅に出る楽しさをこんなに素敵に伝えてくれる映画はめったにない。

何て濃密な2時間だったろう、観始めたと思ったらもう終わっていた。

この映画は単なるロードムービーを超えた何かがある。主人公役の2人の、まるで正反対な性格が織り成す珍道中が面白いからだけではない、力強い何かがある。旅というのが、単に各地を巡るだけでなく、その土地に流れる空気をじかに感じ、味わい、取り込み、自らの一部としていくことで、忘れえぬ感動を刻み込むことのできる素晴らしい方法だということを改めて教えてくれる。

俺はこの映画を去年10月の公開初日に見ておくべきだった。南米を一周すると言い出して結局それを具体的に担保する行動に何も出なかった俺は、南米の魅力を何も掴みきれていないまま時間を過ごしてしまった。別にあの時間を俺は無駄に過ごしたとは思わないが、自分が目指すと誰かに約束したものに向かって行動するくらいの気迫を持って、もっと充実した生活を送ることはできたはずだった。この映画を見ていれば、南米に満ち溢れる、人びとや街、自然のパワーを痛烈に感じて、いやがおうでも行動に出ていたに違いない。いずれにしても何も行動を起こさなかった結果、俺は最も大事なものを失ってしまった。あいつに今更謝っても、もう遅い。でも悔しくて仕方がない。

やっぱり俺の野望の一つは、南米にいつか足を踏み入れることだと確信した。アルベルトのように30歳までに旅を終える、というのは俺の職業の性格上難しいが、夢を持ち続けることは悪いことじゃない。

ちなみに、アルベルト役のロドリゴ・デ・ラ・セルナは、キャスティング決定後に実はゲバラ本人の「はとこ」にあたる人物だったことが判明。不思議なことがあるもんです。
(※ゲバラの本名はエルネスト・ゲバラ・デ・ラ・セルナ)


とりあえず、いま旅に出たくて仕方ないそこの君、この映画観てもっともっと疼いて下さい笑