Good Bye, Lenin!

('03独、監督:ヴォルフガング・ベッカー、主演:ダニエル・ブリュールほか)

<あらすじ>
1980年代末の東ドイツ
夫が西ドイツへ単身で亡命して音信が途絶えて以来
魂の抜け殻のようになった母親は、
社会主義奉仕活動に専心することで自分を取り戻そうとしていた。
しかしある日ひょんな事故で彼女は意識を失ってしまい、長い昏睡に陥った。
そして彼女が意識を失っている間に、彼女の信じていた世界はすべて崩壊し、
体制は大きく変革した。
8ヵ月後、意識をようやく回復した彼女だったが、
彼女に強いショックを与えると再び昏睡に陥り、最悪の結果を招きかねない。

母親を失いたくない一心で、息子はある「計画」を思いついた――――。


そうそう、設定は極めて暗いけど、話の中心は政治でも何でもなくて、
息子の母親にたいする愛情がメインテーマだから。
ただ、彼らの行動が政治の流れに無残にも翻弄されていくってのが付随的条件として加わっている。
内容自体はコメディーちっくで笑えるところもあるし、
最後は泣けちゃうところもある映画だから!


と言いながらちょっと暗いことを書いてみよう。


多くの映画評や映画紹介では

・ベルリン映画祭で最優秀ヨーロッパ映画賞(嘆きの天使賞)を受賞した珠玉作。
・ドイツで600万人を動員し、大ヒット!<心の壁>をとかしてしまう珠玉の感動作
・母を失いたくない息子の健気さ!
・ある「計画」が巻き起こす珍事件の数々!


みたいなことが書いてあるけど、


この映画に隠されたメッセージってのは少なくとも3つある。と俺は思う。

・国家とは人間の想像の上に成り立つ「制度」でしかないし、
 また想像のみで十分成り立ちうるものでもある。
・政治の変革が個々の市民に与える影響は時として残酷である
・ウソをつき通すためにはさらに多くのウソで塗り固めなければならない


つまりこの映画の基本的な骨格は、

①歴史の変動を②人の頭脳の中で③8ヶ月遅れて④再構築できるかどうかという⑤実験

ではないかと俺は感じた。


まーそんな話はやめよう。
何かこの映画見てると暗い過去を無理やり明るくしようとしてる感じがしてたまらない。

しかし、メインテーマであるヒューマンドラマの出来は素晴らしいと思う。

母親の知らぬ間に変革した体制、息子の思いついた「計画」、ウソをつく、
というところでだいたい話の筋は想像がつくかもしれないが、

人間にはウソをついてでも守り通したいものがある

という4つ目のメッセージがこめられているように感じる。

ウソに気づきそうになる側とウソを見抜かれまいとする側の微妙な駆け引き、
それが巻き起こすちょっとわき腹をつつかれるような笑える珍騒動、
(ことあるごとに「東ドイツ製のピクルスの瓶」にこだわる息子の姿は実に滑稽)
そして「母を思う息子の健気さ」。

この映画のいいところは政治の動きに巻き込まれながらも必死にその中で踏ん張る人間の姿をきちんと描いたところじゃないだろうか。




最近どーも悪口ばっか言うのがうまくなっていいところを誉めるのが下手になってきたので、頑張って作品のいいところを引き出せるようなレビューを書いていきたいです。


それにしてもダニエル・ブリュールかっこいいわー