トーク・トゥ・ハー(Hable con ella)

('02西、監督:ペドロ・アルモドバル、主演:レオノール・ワトリング、ハビエル・カマラ)


牛に突かれて長い昏睡状態に陥った女性闘牛士を見守るジャーナリストの男性と、
同じ病院の別室ですでに4年も寝たきりのままの美しい少女を日夜世話する看護士の男性の物語。

そして『Talk to her』というタイトル。




となると、この映画は植物人間になってしまった女性を優しく見守りながら彼女に語り続ける男性たちの愛の物語、という美しい想像が浮かんでくる






かもしれないが、実際のところ、この映画はそんなキレイごとでは片付かない。

きわめてえげつない描写が濃々と、そして何のはじらいもなく展開されている。。

もっとはっきり言えば、変態と言われても仕方ないダサ男と、そいつとうっかり仲良くなってしまった哀れな男の話だ。

日本語版の予告のラストの『深い眠りの底でも 女は女であり続ける』なんてフレーズは誤解を生むだけだからやめろと言いたい。


観終わったときは、構成の流麗さと、配色の美しさにうっとりしてしまうが、我に返ってよく咀嚼してみると、とんでもない映画だと気づく。

えげつなさむき出しだった『オールアバウト〜』とは対照的に、静けさの中に堂々とえげつなさをしのばせている。


ハビエル・カマラやレオノール・ワトリングの無表情を通す演技力がそれを支える。ある意味すげぇ。


アクが強いのでお勧めしないが、俺は嫌いじゃない。



印象論だが、どうしてスペイン映画にはホモとかレズとか言ったセンシティブなテーマを何のためらいもなく扱った作品が多いんだろね。日本人の目からするとまだまだセンシティブな問題だけど、スペインではすでに社会的にある程度克服された問題(※)だと認識されてるんだろうか。よく分からん。


・劇中劇が面白いので注目
マドリードからセゴビアという随分離れた街までタクシーに乗るというシーンにちょいびっくり。タクシー代・・・


※【追記】
この問題を巡る法律がつい先ごろ成立の見通しが立った模様。

スペイン政府は1日、同性間の結婚を認める法案を了承した。国会審議を経て05年にも施行される見通し。欧州連合で国単位で同性結婚を認めるのは、オランダとベルギーに次いで3カ国目。(asahi.com 10/02 11:51)