[ニュース]大手3社ノッチアップ

ふーむ。

出典:Standard & Poor's website 07/08/27
http://www.standardandpoors.co.jp/site/contentdetail.do?method=article&r=6&l=JP&oid=092f51ae800f2e3b

スタンダード&プアーズは本日、日本郵船商船三井川崎汽船の長期会社格付けと長期優先債券格付けを上記の通り、それぞれ1ノッチ(段階)引き上げた。格上げは、事業基盤の強化と収益安定化の進展によって、各社の市況変動への抵抗力が従来以上に高まっていることに基づく。長期会社格付けのアウトルックはいずれも「安定的」である。

日本の大手海運3社は世界有数のマルチラインの海運会社として、多様な事業ポートフォリオと優良な顧客基盤を持つ。また多くの資源を輸入に頼る日本にとって実質3社に集約された日本の外航海運会社はライフラインとして重要な位置づけにある。3社は外国人船員の登用やオペレーション効率の改善などを通じて、継続的にコスト削減に取り組んでおり、国際的にみても高いコスト競争力を維持している。長期契約を主体とし、海運市況の変動リスクを一定範囲にコントロールする保守的な事業方針のもと、安定的な自動車輸送船事業や油送船やドライバルク船などの不定期船事業の競争力が強化された結果、各社のキャッシュフローの安定性は一段と向上しており、市況悪化への抵抗力が従来以上に高まっている。好調な業績を背景に株主資本の蓄積が進んでおり、事業環境の悪化に対する財務面の耐久力も強化されている。

今後の船舶供給の増加はリスク要因である。しかし、世界的な水平分業の進展やグローバル経済圏の新興国への拡大を背景に、海上荷動きは中長期的に拡大が続くとみられることから、一時的に景気の影響を受けることはあっても、需給バランスが今後数年で極端に崩れる可能性は限定されると考えている。特に日本の大手3社については、長期契約の積み上げと事業の分散により、海運市況がある程度下落したとしても、業績が悪化する度合いは限られよう。また、各社とも船隊増強に対する投資を積極化させているが、投資の回収が比較的確実な長期契約に裏打ちされた事業と市況リスクに直接さらされる事業のバランスや、成長投資と財務安定性とのバランスを重視する方針を示しており、過度な財務リスクを伴う投資が行われる可能性は低いとみている。そのため、ここ数年で強化された各社の財務基盤が再び大きく悪化するリスクは当面限定されると考えている。

日本郵船
バルク・エネルギー部門を中心に新造船投入や長期契約の積み上げにより、海運事業の競争力の強化と収益の安定化が図られている。また、陸上物流と航空フォワーディングを含めた「総合物流サービス」の強化にも注力している。非海運部門の収益貢献は現時点では限られているものの、今後海外における総合物流サービスの着実な成長が見込まれることから、海運部門の収益変動を緩和する役割は徐々に高まるとみられる。なお、2005年に子会社化した日本貨物航空は事業環境の悪化を受け、今期は2期連続で200億円近い損失を計上する見込みだが、機体の入れ替えや運航効率の改善を進めていることから、来期以降は損益も回復に向かうとみている。現在計画している設備投資を進めても、自動車船事業の安定成長や非海運事業の拡大によって、今後数年、業績は堅調に推移する見通しであり、総資本に占める純有利子負債(リース調整後)の比率(2007年3月期末約63%)が再び大幅に悪化する可能性は当面は低いと考えている。さらなる格上げに向けては、海運事業における一層の長期契約の積み上げや、日本貨物航空の収益回復を通じて、キャッシュフローの安定性を一段と高めることができるかに注目していく。

商船三井
海運市況の変動リスクにさらされない「安定利益」の拡大に取り組んでおり、ドライバルク部門や油送船部門を中心に長期契約の積み上げが進んだことで、キャッシュフローの安定性が向上している。海運事業の戦略分野に対し経営資源の重点投入を続ける方針であるほか、今後数年は建造価格上昇前に発注したコスト競争力の高い新船の投入が進むことにより、事業基盤の一段の強化が見込まれる。業績は当面堅調に推移するとみられることから、総資本に占める純有利子負債(リース調整後)の比率は、今後数年、改善基調を維持できる見通しである(2007年3月期末は約56%)。さらなる格上げに向けては、今後の資本・負債構成の改善度合いとともに、安定利益のさらなる拡大や、今後の船舶投資の方針などに注目していく。

川崎汽船
自動車輸送船部門の競争力強化や、ドライバルク船部門や油送船部門での長期契約拡大を進める一方、一段のコスト競争力強化にも取り組んでおり、市況変動への抵抗力が着実に高まっている。ただし、コンテナ事業において、需要増加に合わせた能力増強を行う方針であるため、他の2社と比べ市況変動リスクの大きい同事業へのエクスポージャーが相対的に高いという事業構造に当面大きな変化はないとみられる。引き続き高水準の設備投資が見込まれるものの、総資本に占める純有利子負債(リース調整後)の比率は今後数年間50%程度で安定的に推移する見通しである(2007年3月期末は約54%)。さらなる格上げに向けては、長期契約拡大への取り組み、船舶投資の方針などに加え、好業績を背景に資本・負債構成を一段と強化できるかにも注目していく。