すっきりしない

感情が、何となくみんなの心の中でくすぶってた。


同期が今日、一人やめてった。



今日もあいつは最後までバカだった。

愛すべきバカ仲間の一人だったのに。

あいつといたらいつも楽しかったのに。



あいつが何考えて、何を思って、この職場をあとにしたかなんて俺にどうこう言う資格はない。

確実なのは、あいつは悩みに悩んだ末に、新しい道を選んで一歩踏み出した。


それだけのこと。


ここに残るという道を無意識のうちに日々選択し続けている俺らにできることはただ、
あいつの思いが届かなかった分まで、できるとこまでやってやる。


それだけ。


あいつが気兼ねなく新しい職場で働けるように。



幸いなことに、いま、まさに自分がこの世界で一番やってみたいと思ってたことに最も近いことを俺はさせてもらっていると思う。

いいことだけではない。むしろ検討が深化するにつれて、醜い矛盾がやけに目に付くようになってきて、どうしようもねえなと思うこともいっぱいある。むかついてむかついて投げ出したくなるような気分になることもある。


でも、そういう解決しがたい矛盾を抱えているのが現実の社会なのであって、それを少しでも解きほぐしていく微細な力の一つになる、というのが俺らの職業に課された使命のはず。


そこで何か成果を残せなかったら、何かひとつ成長した証を身に付けられなかったら、
やめてったあいつに向ける顔もない。


何の支えもない一本道を歩き出したあいつの勇気がいつまでも続きますように。