誰も知らない

('04日本、監督:是枝裕和、出演:柳楽優弥、YOUほか)

東京で起きた実際の事件を題材にした作品。主人公の明役を務めた柳楽優弥が史上最年少でカンヌの主演男優賞を獲得したことでも話題になった。

柳楽が主演男優賞をもらえるほどの実力があるのかどうか、演技に詳しくない俺にはよく分からない。しかしそれでも、この映画の中で最も精神的に激しく変化するキャラクターの、その変化を実になめらかに演じきった彼は素晴らしかった。

しかもその変化は、思春期を迎えた少年の心が、優しさに飢える中ですさんでいくという、極めて複雑な過程であったにもかかわらず。

この映画が発する社会的メッセージについては、観たひとがそれぞれかみ締めればいい。俺はただ、様々な偶然が重なって、明とは全く違う人生を歩んできただけであって、人生の分かれ道は紙一重だ、ということを感じたにすぎない。

ちなみに「エイプリルの七面鳥」同様、この映画にも妙ちくりんな母親が出てくる。それを演じるのがYOUなわけだが、パトリシア・クラークソンと雰囲気がよく似てる。顔も、体の線がクソ細いとこも、年齢の割りになんかかわいらしいとこも。

この2つの母親像をきちんと比較してみるのはおもしろいだろう。パトリシアが演じたのは、ロクなことをしない娘を忌み嫌っていたがやはり娘への限りない愛に気づく母親。YOUが演じたのは、子供たちに愛情をふりまきながらも自分の女としての幸せのほうを優先してしまい、子供たちをどんどん不幸の淵へ追いやってしまう、社会的には「失格」な母親。

…とここまで書いてみて俺はいったい何が言いたくて比較を持ち出したのかよく分からなくなった。うーん。まぁとにかく、どっちの映画も、採用したアプローチは大きく違うけど結局は「子供に対する優しさ」みたいなものを描きたったんだなということです。・・・なんか違う気がするけどもういいや。