で、無事仲直りできたわけだが、この2人を8年間も引き裂くことになった当の原因はと言うと、


500円。


たった500円である。




ロウはふにゃふにゃした性格で、こっちの言うことをかわすのがうまい。

ある時、ロウがうえぽんから500円を借りたが、うまいこと言い訳して一向に返さない。
気の弱いうえぽんは返してと強く言えない。
そうこうするうち3ヶ月が経った。


ある日、阪急六甲の三宮行きのホームで、正義感の強い(謎)俺が切り出した、
「ええ加減金返せや」と。

「だーかーらー、俺いま金ないねんてーふにゃふにゃー」
とかわすロウ。

早くもここで俺はカチンと来たらしい。



言い争いは電車の中でも続いた。
2人の真ん中に座らされて、まゆげをハの字にして困っているうえぽん。



三宮に着いたあとも俺とロウはもめ、お互い吐き捨てるように
「じゃーな!」
と言って分かれた。




翌朝。
何かのテストの日だったと思うが、ロウより俺の方が早く学校に来ていて、直前まで詰め込もうと自分のノートを読んでいた。
ロウの席は俺のすぐ後ろだった。


ロウが入ってきて後ろの席に座った。
いつもなら
「生物ゼロ勉やーテスト何出るん?」
みたいな会話で始まるはずが、

この日は2人とも顔も合わせず、挨拶もしなかった。



あの「じゃーな」を境に以後8年間、2人の間の会話は完全に途絶えた。




たかが500円で互いに一番大事な友達を失った中2のあの日。
しかも俺がロウに貸していたわけでも何でもないのにケンカになったあの日。





つまりこの話で言いたいのは、
「中学生にとって500円の価値はごっつデカい」
ということです。


…じゃなくて、高校卒業したあとも何かココロに引っかかってたやり残し感がやっと解消された、そんな一晩。

毎日毎日ロウのことばっかり話してたのに急に言わなくなったからうちの親が心配していた、とロウに話すと

「うちも一緒。母さんが『あら、あれだけHeBoy君のことばっかり言ってたのに最近どうしたの?』って聞いてきても『え、ああ、まあ、その』って感じだったわ。」

だったらしい。若気の至りってやつか。