デザインのデザイン(原研哉、岩波書店)

デザインのデザイン

途中まで読んだ時点での感想

タイトルがタイトルなだけに前から買おうかかなり渋ってて、
ちょっと中身に目を通してみたら実はなかなか哲学的でまともなこと書いてたから買いました。

んで序章とあとがきだけ読んだんやけど、これ良書かもしれん。

デザインという観念が一体いつ生まれ、どういう過程を経ながらどんな形で社会に影響を及ぼしてきたかをきちんと論述し(案の定バウハウスにかなり傾注した記述だけど)、80年代のいわゆる「ポストモダン」期(この人に言わせれば、この時期というのはモダニズムに疲れた老人たちがデザインで遊び、生活者もその虚構を受け入れてた時期にすぎず、「新たな時代とモダニズムの相克」という表現は妥当でないという)を経験した現代において、我々はどういう地平に立っているのか、モダニズムの先には何があるのか、そして物事の本質をえぐりだす作業としてのデザインを改めてどう捉えていくのか

ってのを考察しようって感じな本。

読んだ範囲では、この人の主張は、奇抜で斬新なデザインを生み出して「時代遅れ」の恐怖感を人々に植え付けるような今までの形態ではなくて、むしろ過去から蓄積してきて手に余るほどになった身の回りの素材から再構成したデザインであっても十分クリエイティブだ、って感じかな。

音楽でリミックスがはやってるのと同じか
(いや、あれは単に作曲能力が低下してるだけなのかもしれんが)

読みやすいので総合記述のネタ用にちゃっちゃと読んでみます。

最後まで読んだ時点での感想

自分の手がけたデザインについての解説部分は読んでて正直ウザかったが、デザインという行為と社会の関係を真摯に見つめる彼の姿勢に共感。


この本の最大のキーワードをあげるなら、EMPTINESS


簡単に言えば

無為の中に吸引力を生ませるようにデザインするという態度。

空っぽな態度。


憶測だが、この態度がもしからしたら、前にここで紹介したJ・ナイが国際関係で重視する「ソフト・パワー」を日本に持たせる一つの鍵になるかも。


ってのも、俺は去年から観光行政って何、日本の魅力って何みたいなことに興味を持ち始めたからで、VISIT JAPAN キャンペーンを展開する政府の方針に対して一つの疑問をずっと抱いてたのに、なかなかうまく表現できずに悩んでいた。
その疑問を、原がEMPTINESSの観点から明快に代弁してくれてる一節を見つけたのでこれを今日の日記の締めくくりとする。

未来のヴィジョンに関与する立場にある人は「にぎわい」を計画するという発想をそろそろやめた方がいい。「町おこし」などという言葉がかつて言い交わされたことがあるがそういうことで「おこされた」町は無残である。町はおこされておきるものではない。その魅力はひとえにそのたたずまいである。おこすのではなく、むしろ静けさと成熟に本気で向かい合い、それが成就した後にも「情報発信」などしないで、それを森の奥や湯気の向こうにひっそりと置いておけばいい。優れたものは必ず発見される。「たたずまい」とはそのような力であり、それがコミュニケーションの大きな資源となるはずである。(p174)