ラスト・サムライ
('03米、監督:エドワード・ズウィック、主演:トム・クルーズ、渡辺謙、ティモシー・スポールほか)
外国人が日本を描いた作品としては確かにものすごく日本や日本人の精神を調べてある。
と同時に明治期の「日本人」を典型化して一定のパターンに強引に押し込んだイメージも投影されている。
そこらへんを遠目に見ながらこの映画を見るとおもしろいかもしれない。
ただ、武士道に身を委ねていく過程で主人公の戦場トラウマの問題が宙ぶらりんになったままだったのが惜しい。
俺的にはもう少し「人を斬る」痛みを生々しく演出して、主人公がそこをどう克服していくのかを提示してほしかった。
銃を撃つのとは違う感覚がそこにはあるはずだ。
武士道を語るなら、そのカッコよさと同時に血生臭さも正面から取り扱う必要があった。
この感覚の欠落(あるいは回避)は長崎の女子児童殺害事件にも通じるところがあるかもしれない。
それにしても各俳優の演技がうまい。
七之助の明治天皇役は恐ろしいくらいハマリ役だった。
飛源という武士の子を演じていた少年も、子供らしさと武家の子としての猛々しさを両方表現できていて、素晴らしかった。